« 森と水と紙(その1) | トップ | 森と水と紙(その3) »

2005年10月06日

森と水と紙(その2)

森林破壊・違法伐採との出会い
leaf5.gif もう十数年も前になるのですが、海外調査に行ったついでにアメリカ、カナダ、イギリスのFoE(地球の友)のオフィスを訪問したことがあります(FoEのメンバーでもサポーターでもなかったのですが…)。ちょうどその頃、彼らは東南アジアでの違法伐採問題に取り組み始めてまもない頃で、訪問の記念にということで違法伐採問題のレポートを2冊頂いてきました。違法伐採問題への欧米の環境NGOの取組みはもう20年近くも続いているわけです。

 そんな経験もあったものですから、私も個人的にこの問題の動向に注目して来たわけです[注1]。最近またちょっと気になっていることがあります。それは、中国の急速な経済発展にともなって、アジアの森林がなくなってしまうのではないかという声が聞かれ始めたからです。


中国が気になる

leaf4.gif 実は今年、中国はイタリアを抜いて世界一の家具輸出国になりました。また、急速な経済発展にともなって今後、中国では住宅建設の激増が見込まれています。
 さらに、中国は今や米国に次ぐ世界第二の紙の市場でもあるのです。それはすごいと感心している場合ではありません。で、その原料となる木材はどこからやってくるのかを考えて頂きたいわけです。

 森林面積では世界5位だそうですが、森林被覆率は16.55%に過ぎません。人口が膨大なことを考えて、一人当たりの森林蓄積量は9立法メートル、世界全体のそれは72立方メートルですら、8分の1に過ぎません。つまり森林資源の乏しい国なのです[注2]。そこで、政府は耕作地を休耕地に戻し、荒れ山・荒れ地で造林と森林育成を行なう「退耕還林」政策を進めています。

 そんな状況ですから、原料となる木材は国内でも調達するわけであすが、大半はは周辺諸国などから輸入せざるをません。気になるのは、ロシアで違法伐採が急増していたり、インドネシアから大量に違法伐採材が中国に流れ込んいると噂されていたり、ベトナム、マーレーシア、タイ、カンボジア、フィリピンなどでも、違法伐採が増えているようなのです。どうも中国の影がチラついている気がしませんか。

中小製紙工場から大規模プラントへ
leaf3.gif 中国は紙を発明した国[注3]ということで、紙の製造については伝統のある[注4]わけですが、伝統的製紙業は小規模工場が多く、排水による河川の水質汚染がひどいこと知られています。たまりかねた政府は、汚染のあまりにひどい工場を強制的に閉鎖したり、小規模工場への融資打ち切りました。
 その一方で海外の製紙メーカーによるパルプ・製紙一貫工場の建設を歓迎する方針を打ち出しました。これは公害防止の視点からは前進といっていいでしょう。ただ、そうした海外企業は、原料を国内で調達しようと、成長の早いユウカリなどの外来樹種を植林したプランテーション作り始めています。こうした外来樹種の環境への影響を中国科学院は懸念しているのですが……

中国でも違法伐採が
leaf2.gif 近隣諸国の違法伐採が増加しただけでなく、中国国内でも違法伐採が表面化しつつあります。それの発見に環境NGOが大いに貢献しています。また、消費者や製品のユーザー企業による不買運動などが中国でも行われ始めています。中国政府(国家林業局)も違法伐採の存在を確認している。こでが中国の現状です。

 どうやら、中国がアジアの森林をすべて切り倒してしまうのではないかという危惧も、あながち杞憂とは言えなそうです。 

 そうした中国から日本へも実は紙の輸出が始まっています。逆に家具などの原料として、日本の木材が中国に輸出され始めています。私としては、森林破壊や違法伐採が大いに気になるわけです。

-----------------------------------------------
[注1]12年前、米国の『ディープ・エコロジー』という本の編著者の一人ビル・デヴァル氏が作成を手伝ったということで、『CLEARCUT』(シエラクラブ・ブックス)という写真集を送ってくれました。これは皆伐されたアメリカやカナダの森林の写真だけを集めたちょっと衝撃的な写真集で、これも森林破壊問題への私の感心をさらに強めてくれました。ちなみにこの写真集の本代と輸送料は、アウドドア用品メーカーで環境保護に熱心なことで知られるパタゴニア社が持ってくれたと、後日、デヴァル氏から聞いて「さすがパタゴニアはすごい」といたく感動した次第。まあ、数十ドルの費用負担で、森林保護派を日本にも確実に一人育てたのだから、パタゴニア社にとっては効果的な寄付だったと言えるかも知れません。
clearcut.gif

[注2]情報源は
http://www.zhb.gov.cn/japan/env_info/3_7_2003_09.htm


[注3]105年に後漢の蔡倫が発明したと伝えられ長く信じられてきましたが、前漢時代と推測される遺跡から紙が見つかったことからこの説は覆された。蔡倫は発明者というよりは改良者だったようで紀元前 2 世紀から紙が存在していたとする研究もあるようです。

[注4]水上勉の小説『清富記』(新潮社、1995年)には、南宋時代の中国では様々な原料から紙が作られていたことが述べられています。非木材紙のはしりがこの頃すでに見られたわけです。
seifuuki.gif

投稿者 WaterLIFE : 2005年10月06日 05:38